1. 法令上の位置づけと改正の要点
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法に基づき常時50人以上の事業場で義務付けられてきました。しかし2025年の法改正により、50人未満の事業場にも義務化が拡大されることが決定しています。施行時期は「公布後3年以内」とされ、遅くとも2028年までには全面実施される見込みです。これにより、中小規模の拠点も法令対応を迫られるため、今から準備を始めることが重要です。
現行制度と法的根拠
●現在、ストレスチェック制度は 労働安全衛生法第66条の10 に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対して年1回以上の実施義務が課されています。
●50人未満の事業場では、現行法上「努力義務」とされています。
●実施義務の根拠条文(50人以上対象)および具体的な実施要件(実施者、通知、面接指導、集団分析等)は厚生労働省等のガイドライン/通達で運用ルールが定められています。
改正法案の概要と義務拡大の枠組み
●2025年5月14日に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が公布され、50人未満の事業場にもストレスチェックを義務付ける規定が盛り込まれました。
●具体的には、改正法案の中で以下のような条文骨子が提示されています:
> 「ストレスチェックについて、現在当分の間努力義務となっている労働者数50人未満の事業場についても実施を義務とする」
●ただし、義務化拡大の施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」と定められており、最大で2028年5月までに施行される可能性が指摘されています。
●同時に、50人未満の事業場の「負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する」という配慮規定も明記されています。
●一部報道等では、改正法により 令和10年度(2028年度) に完全義務化となる可能性が高いと予想されています。
注意点・不確定要素
●義務化の施行日はまだ政令次第であり、前倒しや段階的な実施があり得ます。
●義務化拡大の際に、小規模事業場に合わせた実施方法や軽微な調整が導入される可能性が議論されています。
●義務化後の 罰則規定 については、現時点では明確な罰金条文が公表されていない、または報じられていないという見方が多いです。
2. 会社がやるべき準備事項(5ステップ)
以下は法令拡大後を想定した実務対応指針ですが、現段階から準備を進めておくことでリスクを抑えられます。
① 実施者の確保
●資格を持つ医師・保健師・公認心理師などを確保する必要があります。
●社内に適格者がいない場合は、外部委託契約の早期締結が不可欠です。
●義務化直前になると依頼が殺到するため、早めにリソースを押さえておくのが賢明です。
② 社内体制の整備
●衛生委員会の設置(50人未満では義務ではありませんが、制度運用には好ましい)
●実施事務従事者の任命
●データアクセス権限や情報管理ルールの整備
●標準運用手順(SOP:いつ、誰が、何をするか)を文書化しておく
③ 社員への周知・説明と同意取得
●実施目的、実施方法、個人情報保護・閲覧制限について透明性を持って説明
●FAQ形式で疑問に答える案内資料を作成
●説明会・Q&Aセッションの開催も有効
④ 面接指導への対応体制設計
●高ストレス者からの申出受付窓口設定
●医師手配フローと意見書取得・報告の流れ
●意見書に基づく職場対応(配置転換、業務調整等)を検討できる体制
⑤ 結果活用と職場改善
●集団分析を実施し、部署・職種ごとのストレス傾向を把握
●改善テーマを具体化し、改善計画を立案・実行
●フィードバックループを設け、改善後の再評価も定期化
よくある誤解・実務上の落とし穴
ストレスチェックに関しては「50人未満なら簡易版でよい」「結果は人事が自由に閲覧できる」といった誤解が多く見られます。しかし、改正後は50人以上と同等の水準での実施が必要であり、本人同意なしに結果を人事が直接確認することはできません。また、高ストレス者から申出があれば面接指導は必須であり、衛生委員会の有無にかかわらず制度対応を行わなければなりません。
「50人未満でも今すぐ義務」ではない
現時点ではまだ完全な施行はされておらず、義務化は公布後3年以内の政令施行日から始まるというのが法制度上の枠組みです。
人事が結果を自由に閲覧できるわけではない
個人の同意なしに人事や管理部門が閲覧することはできません。運用上、実施者・医師が守秘義務を負う形を前提とすべきです。
面接指導は任意ではない
高ストレス者から「申し出」があれば、企業は医師による面接指導を実施する義務があります。拒否や先延ばしは法違反リスクに直結します。
衛生委員会がないと義務化除外されるという誤解
衛生委員会の有無はストレスチェック義務化そのものには影響しません。小規模事業場は委員会なしでも制度を運用する方法を整備する必要があります。
実際に起きうるトラブルと対応策(ケーススタディ風)
中小企業では「医師の確保が間に合わない」「社員が受検を嫌がる」「面接指導後の対応が滞る」といったトラブルが想定されます。これらを防ぐためには、外部の医師ネットワークを早めに確保し、社員には守秘義務やプライバシー保護を徹底的に説明することが効果的です。
さらに、面接指導後は意見書に基づき配置転換や就業区分の見直しを迅速に検討できる体制を整えておくことが不可欠です。
ケースA:医師確保ができない
対応策:広い地域にまたがって各事業所がある場合、全国ネットワークでスポット対応できる産業医・医療機関を抑えておく。「全国医師面接ネットワーク」などを利用するのも有効。
ケースB:社員から「プライバシー侵害」懸念が出る
対応策:説明資料を事前に配布し、守秘義務や匿名化・集計方法について詳しく説明する。Q&A方式で疑問を潰しておく。
ケースC:面接指導後の対応が滞る
対応策:意見書をもとに、就業区分の検討/配置転換等の制度的仕組みをあらかじめ整えておく。
最後に
ストレスチェック義務化の拡大は、従業員50人未満の事業場にも法対応を迫る大きな転換点です。
施行時期は確定していないものの、公布後3年以内という枠組みが定められており、最長で2028年5月までには義務化される見込みです。
今から準備を始めておかないと、制度対応が後手になり、混乱やリスクを抱える可能性があります。
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