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健康診断はなぜ必要?会社のリスク管理としても有効なその理由とは。

健康診断はなぜ必要?会社のリスク管理としても有効なその理由とは。

引用:健康リスクから会社を守る 税務研究会出版局

人事や総務の皆様は毎年行う定期健康診断はなぜ必要なのかご存じでしょうか?
健康診断は社員の福利厚生の為だけが目的ではありません。実は、会社のリスクを軽減する目的もあります。したがって、健康診断を実施している「だけ」では非常に危険なのです。

定期健康診断とは

まずはじめに、定期健康診断(安衛則第44条)ついて簡単に解説します。
定期健康診断は1年以内ごとに1回実施します。

【健康診断の項目】
 1 既往歴及び業務歴の調査
 2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
 3 身長(※2)、体重、腹囲(※2)、視力及び聴力の検査
 4 胸部エックス線検査(※2) 及び喀痰検査(※2)
 5 血圧の測定
 6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※2)
 7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※2)
 8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー ル、血清トリグリセライド)(※2)
 9 血糖検査(※2)
 10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
 11 心電図検査(※2)
 ※2:定期健康診断(安衛則第44条)における健康診断項目を省略できる基準があります。

なお、労働者には健康診断の受診義務があります。

【労働安全衛生法第六十六条(健康診断)の5】 
 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。
 ただし事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、
 他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、
 その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

健康診断ない会社、健康診断を実施している「だけ」の会社は危険!

健康診断は実施していて保管もきちんとされている企業様は多いと思います。
しかし、それだけでは会社は非常に危険な状態です。
なぜ健康診断を実施している「だけ」では非常に危険なのでしょうか?

ここからは、事例をご紹介します。

要精密検査を受けた労働者がいました。その労働者に対して会社から受診を促しつつも、有能な労働者の才能を制限したりせず、逆にプロジェクトリーダーに指名しました。締め切りに追われる過重な労働を続け、ついに自宅で脳内出血により死亡してしまいました。
(死亡前1週間の労働時間は法定労働時間の1.53倍の約73時間、残業(時間外労働時間)は1か月で140時間)

その後、ご遺族が裁判を起こしました。
会社としては「精密検査を受けなかったのは本人の問題だ!」と反論しましたが、裁判官は会社に対して3,200万円の賠償判決を言い渡しました。
その理由は「本人の申出に関係なく、会社側は要治療状態の社員に対して業務軽減等の安全配慮義務を担う」というものでした。

「判決要旨」
①死亡した社員の基礎疾患である本態性高血圧は、入社以降の長時間労働により、自然的経過を超えて急速に増悪していたところ、これに加えて平成元年以降の新プロジェクトによる高度の精神的緊張を伴う過重な業務により、高血圧を悪化させ死亡するに至った。
②会社は、この社員の高血圧の悪化を定期健診により認識していたが、この社員の就労につき必要な配慮を怠り安全 配慮に違反した。
③社員本人も、会社から毎年定期健診の結果の通知を受け、また会社側から精密検査の指示を受けていたにもかかわらずこれを受診せず、さらに社員自身の基礎的身体的要因も血圧上昇に何らかの影響を与えていたと解されるから、50%の過失相殺が妥当である。

健康診断を実施している「だけ」にしないためには?

では、健康診断を実施している「だけ」にしないためには、どのようにしたらよいのでしょうか。

そもそも医療機関から届く健康診断結果を見ると、「医師の診断」と「医師の意見」という欄があります。
「医師の診断」には、健康診断を実施した医療機関の医師による診断内容(異常なし、要再検査など)が記載されます。一方で、「医師の意見」では、事業主から依頼された医師が就業するにあたって何か条件を付ける必要があるのか、休業した方がよいのかなどを記載する箇所になります。これを就業判定と言います。
就業判定がなされた後は、会社側は判定を受けて適切な事後指導や事後措置をする必要があります。
なお、この就業判定は、事業場の規模や産業医の選任義務に関係なく、すべての事業者の義務なのです。

◆医師の診断 = 健康診断をした医師による診断
 (例:異常を認めず、要精密検査等)
◆医師の意見 = 産業医等の医師に依頼した就業判定
 (例:就業可、条件付き就業可、要休養等)

リンク:労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について

最後に・・・

健康診断を受診しただけでは、労働者だけでなく会社にとってもリスクである、ということはご理解いただけたのではないでしょうか。会社のリスク軽減・有能な労働者が元気に働ける環境を作るためにも、就業判定はとても重要です。

日本産業医支援機構では、サービスの一つとして就業判定サービス(就業区分の判定および意見書作成)がございます。定期健康診断を実施している「だけ」にならないよう、ぜひご検討ください。

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