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医師による面接指導とは? ~なぜ医師面接が必要なのか~

医師による面接指導とは? ~なぜ医師面接が必要なのか~

職場における「医師による面接指導」は適切に行われているでしょうか?

長時間労働者や高ストレス者に対する医師面接指導の必要性や、労災事例・面接指導事例など、経営者や人事労務担当者が知っておきたい「医師による面接指導」について解説いたします。

医師による面接指導とは?

労働安全衛生法に、職場における2つの面接指導が定められています。
一つ目に、長時間労働者に対する面接指導(第66条の8及び第66条の9)
二つ目に、高ストレス者に対する面接指導(第66条の10)

これらの面接指導は、長時間の労働により疲労が蓄積し心身のストレスを背景とする健康障害発症リスクが高まった労働者について、脳と心臓疾患やメンタル不調の未然の防止を目的とするものです。
では、なぜ医師面接が必要なのでしょうか。

なぜ医師面接をしなければならないか

労働者健康安全機構の労働安全衛生総合研究所が国の委託を受けて実施している、労災認定された労働者のデータベース構築による研究があります。
その中から医師面接がいかに大事かを示す「健診の有無と医師面接受診の有無」のデータが上記の図になります。

まず、脳・心臓疾患として労災認定された労働者の健康診断受診の有無では約70パーセントの労働者が健康診断は受診していました。
しかし、健康診断は受診したものの、脳血管疾患ならびに虚血性心疾患(脳・心臓疾患)として労災認定された労働者のうち医師面接指導を受けていたのは2.4%、約50人に1人だけで、それ以外の労働者は医師面接指導を受けていませんでした。この方たちが医師面接にまでたどり着けていたら…。

このような報告を基に、労災を起こさせないために医師面接指導をきちんと実施していかなければならない、と考えるのは自然でしょう。
(『健康リスクから会社を守る!! 知らなかったではすまされない従業員の健康管理と改正安衛法対策』より)

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長時間労働者への面接指導

厚生労働省では、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成18年3月17日付け基発第0317008号、令和2年4月1日付基発0401第11号雇均発0401第4号改正)を策定し、時間外・休日労働時間の削減、労働者の健康管理の徹底等を推進しています。

① 上の図は、労災補償に係る脳・心臓疾患の労災認定基準の考え方の基礎となった医学的検討結果を踏まえたものです。
② 業務の過重性は、労働時間のみによって評価されるものではなく、就労態様の諸要因も含めて総合的に評価されるべきものです。
③ 「時間外・休日労働時間」とは、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間のことです。
④ 2~6か月平均で月80時間を超える時間外・休日労働時間とは、過去2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間のいずれかの月平均の時間外・休日労働時間が80時間を超えるという意味です。
(「過重労働による健康障害防止のための総合対策」厚生労働省より)

例えば、脳・心臓疾患は、その発症の基礎となる動脈瘤などの血管病変などが、主に加齢、食生活、生活習慣等の日常生活による要因や遺伝などによる要因により、徐々に進行し、ある時突然発症します。
特に仕事が過重労働であったために血管病変などが著しく憎悪し、その結果、脳・心臓疾患が発症することがあります。
このような場合には、仕事がその発症にあたって、相対的に有力な原因となったものとして、労災補償の対象となります。(※参照:ブログ『労災認定基準について』)

このように、動脈癌発症時間が長時間労働との関連性が強いとする医学的知見を踏まえ、脳・心臓疾患の発症を予防するため、長時間にわたる労働により、疲労の蓄積した労働者に対し、事業者は医師による面接指導を行わなければならないこととされています。
そこで、運転業務従事者の長時間労働による労災認定事例をご紹介しましょう。

※労災認定基準についてこちらを参照ください。 ブログ『労災基準の見直し』はコチラ >>>

長時間労働による労災認定事例

【 脳梗塞を発症したタンクローリー運転手が認定された例 】
Aさんは、タンクローリーの運転手として、ガソリンや灯油などを配送する業務に従事し、発症前2か月平均で月約82時間の時間外労働を行っていた。
● Aさんは、製油所でガソリンをタンクローリーに積んでいたところ、言葉が不明瞭となり、呂律が回らなくなった。
● Aさんの異常に気がついた製油所の社員が救急車を呼び、Aさんは病院に搬送され、脳梗塞と診断された。

判 断
① 「脳梗塞」は、対象疾病に該当する。
② 発症前2か月平均の時間外労働時間数は約82時間である。
③ 上記②より、発症前2か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働 が認められることから、業務と発症との関連性が強いと評価できる。
④ ①~③により、Aさんは労災認定された。
(「脳・心臓疾患の労災認定」 厚生労働省より引用)

長時間面接指導の対象となる労働者

長時間面接指導の対象となる3つの要件は下記の通りです。
① 労働者(高度プロフェッショナル制度適用者を除く)
 月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる者(申出)※1
② 新技術・新商品等の研究開発業務従事者
  上記①に加えて、月100時間超の時間外・休日労働を行った者(強制)
③ 労働基準法第41条の2の規定に基づく高度プロフェッショナル制度適用者
 1週間当たりの健康管理時間 ※2 が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について月100時間を超えて行った者(強制)※3

※1 なお事業者は、月80時間超の時間外・休日労働を行った者については、申出がない場合でも面接指導を実施するよう努める。月45時間超の時間外・休日労働で健康への配慮が必要と認めた者については、面接指導等の措置を講ずることが望ましい、とされております。
※2 労働基準法第41条の2第3号の規定に基づき、対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(労使委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間を指します。
※3 なお事業者は、1週間当たりの健康管理時間が、40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1月当たり100時間を超えない高度プロフェッショナル制度適用者であって、申出を行った者については、医師による面接指導を実施するよう努める。とあります。
(「こころの耳:長時間労働者、高ストレス者の面接指導について」厚生労働省より引用)

高ストレス者を対象とする面接指導

高ストレス者を対象とする面接指導は、ストレスチェックの通知を受けた労働者のうち、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者から申出があった場合に行われる医師面接指導の事です。
ストレス、その他の心身の状況及び勤務の状況等を確認することにより、当該労働者のメンタル不調のリスクを評価し、本人に指導を行うとともに、必要に応じて、事業者による適切な措置につなげるためのものです。
このため、面接指導を受ける必要があると認められた労働者は、できるだけ申出を行い、医師による面接指導を受けることが望ましいとあります。
それに対して会社側は、ストレスチェックによって判定された高ストレス者には、なるべくストレスチェックの面接指導を受けるように進めます。

※ストレスチェックについてはこちらを参照ください。 ブログ『職場におけるストレスチェックについて』 >>>

高ストレス者に対する面接指導の事例

実際に高ストレス者に対する面接指導の事例をご紹介しましょう。

【 40歳代前半 入社 20年目の男性 エンジニア 家族は妻・子供2人 】
<ストレスチェック>
判定:高ストレス
ストレスの原因として考えられる因子;働き甲斐、仕事適性度

<産業医面談>
7月に管理職(マネージャー)に昇格。ほぼ同時期に規模の大きなプロジェクトの担当となり、急に仕事の量が増え、責任が増大した。9月頃から朝のしんどさを強く感じるようになり、休日も仕事のことが頭を離れないようになった。
思考力・集中力・意欲も低下し、朝出勤時の気分の落ち込みも出現した。また、夜間の中途覚醒が増加し、日中も眠気を自覚するようになり、月曜日に会社に行くのが特につらく感じるようになった。
上司にはだいぶ前に体調不良のことについて話したが、何ら具体的には対応してもらえず、現状はそのことすら忘れているように思うとのことである。心配した家族の勧めで最近心療内科を受診し、睡眠導入剤の処方を受け始めた。明日再度受診する予定になっているという。
産業医としては、高ストレスであり、心身の症状もあることから、今後上司も交えた面談が必要と考え、本人の同意を得た上で就業上の配慮と、当日人事労務担当部長に就業に関する主治医からの意見書の必要性の検討について連絡した。現時点では業務用車両の運転もあり、この段階ではできるだけ控えるように本人に伝えた。人事労務担当部長も速やかに就業上の配慮の必要性を認識し、人事労務担当部長の依頼で健診当日に産業医から本人にこれを説明し、主治医の就業に関する意見書の提出を求めた。

<その後の経過>
主治医の診断は、『適応障害』で、主治医の就業に関する意見書が本人と上司を経由し、人事労務に提出され、速やかに産業医面談を実施することとした。
面談の結果、産業医より、下記①~③の内容とともに、残業については深夜勤務を避け、可能な限り少なくするよう人事労務担当部長に助言した。

これを踏まえ人事労務として本人に対しては以下の①から➃の配慮を、組織に対しては人員増加の対応をとる方針をうちだした。
①大きなプロジェクト担当から外すこと
②マネージャー職を外すこと
③業務車両の運転については制限すること
④就業時間については、規則正しい睡眠を確保するために、深夜勤務は不可とし、週40時間を超える時間外休日労働時間を月20時間以内とすること(1日当たり2時間以内)

その後、内服薬も調整され、睡眠時間及び中途覚醒も消失し、気持ちも楽になったとの本人からの声も聞くことができ、現在就業は継続し、症状は回復に向かっている。

医師面接指導の具体的な進め方と留意点

●医師面接指導の手段
労働者の様子を把握し、円滑にやりとりを行うことができる方法により行う必要があります(ただし、面接指導を実施する医師が必要と認める場合には、直接対面によって行う必要があります)。
事業者の判断でオンライン(Zoom等)を活用した面接指導を実施することも可能と考えられます。

●医師面接指導の場所の選定
プライバシーに配慮した場所が必要です。まれに弊社のお問い合わせ先から、社内で面接できるスペースがない為、喫茶店でできないかとご相談頂くケースが御座いますが、面接の内容が周囲に漏れたり、周囲の目を気にしながらの面接になる為、適切な場所で実施頂くようお願いをしております。

最後に

長時間労働による心と身体の健康障害、昨今の社会情勢により業務外でも健康障害を訴える人々が増加傾向にあります。会社にとっては、従業員に心身不調の傾向が見られるなど、何かあったらいつでも面談や相談ができる環境を整備しておく必要があるのではないでしょうか。

日本産業医支援機構では、全国6カ所の面談ルーム(東京本社・札幌・仙台・名古屋・大阪・福岡の各拠点)において、専門医による対面での面接、ならびにオンライン(Zoom等)を活用した各種医師面接サービスをご提供しております。
「長時間労働者面接指導」、「ストレスチェック後の面接指導」などの医師面接はもちろん、他にも「健康診断有所見者の事後指導面接」、「休職・復職判定面接」「復職後フォロー面接」など行っております。

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